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ストーリー




日本最東端、ロシア国境の町、根室。
寒風の吹く海岸沿いの荒野に、第二次大戦中に作られ、今は潮風に曝されるがままの朽ちたトーチカの廃墟が点在している。

一人の男が、ひとつのトーチカを見据えたまま、その場にじっと佇んでいる。
見る者もいないはずのそんな光景を、ただ一人、偶然目にしていた女がいた。戦争遺跡の写真を撮っているというその女の出現が、男を深く揺り動かす。

「いや、あなただとは思わなかったんです」
謎の言葉を残して、女の眼差しから逃れるように男は去った。

男の後を追った女。「あれはどういう意味だったんでしょう? 誰か、人違いだったということですか?」
問い詰める女を男は拒む、「どうしてそんなに知りたがるんです? これは、戦争とはまったく関係ありませんよ」

やがて男の口から語られた、トーチカにまつわる小さな記憶。戦争からは遠く離れた、その些細な記憶を端緒として、二人の心はトーチカの暗闇に隠された、誰にも知られることのない時間の深みへと下りてゆく…。


 

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